前田壮一の行動経済学入門

経済学と心理学の中間に位置すると言われる行動経済学について私前田壮一がしっかりと学んでいきたいと思います。

真ん中を選ぶ理由。

「松竹梅」「特上・上・並」。
お店などでは、価格設定が3つに分類された商品を見かけることがありますよね。
そして、この価格帯、絶妙に設定されていて選択に悩むものなのですが、このように3段階に分けられた選択肢があると、ほとんど多くの人は「真ん中」レベルのものを選びたくなる傾向にあるのだそうです。

松竹梅



この「真ん中のものを選ぶ」ということを経済行動学では「極端の回避」「妥協効果」といって、典型的な人間心理のひとつとして知られています。


まぁ、ほとんどの人は「真ん中のものを選ぶ」ということについては納得できますよね。
というのも、グレードによって3つにわけられてしまうと、1番下のものを選択することによって「損したくない」という感情が芽生えてしまいますし、かといって1番グレードの高いものを買うほどの余裕がなかったり、逆に「高いものを買って損したくない」なんて思いが湧き上がってきたりします。


また、1番グレードの低い商品に関しては、「一番低いグレードの商品を選ぶと、貧乏やケチだと思われるかも?」なんていう見栄の心理が働くとも言われています。


しかし、「真ん中のもの」の選択したのであれば、良いも悪いも納得することができます。
例えば、「真ん中」のものが思っていた以上に良かったりすると、かなり得した気分になりますし、劣っていた場合「真ん中だからこんなもんか」「1番のグレードにしなくて良かった」なんて、自分の都合のいいように解釈することができます。


さて、このように価格帯を3つにすることなのですが、2つや4つにしてもいいのでは??
なんて思ってしまいますよね。


実はこの「3」という数字、日本人が「3」が好きだからとかいう曖昧な理由ではなく、しっかりとした根拠があるんですよ。


まず、価格帯を2つにした場合なのですが、統計によると約7割の人が「グレードの低い」ほうを選ぶのだそうです。
この理由としては、2つの価格差によって「安いほうが得」というように感じやすいのだとか・・・。
「価格差」と「性能」を比較しやすいこともありますし、2つの選択肢という場合、どうしても価格で判断してしまいやすいのだそうです。


そして「4つ」の場合。
この場合、4つの選択以外に「買わない」という選択肢も出てくるのだとか。
「Aもいいし、Bも悪くない。Cが1番無難そうだけど、金銭的にはDでもいいかな・・・」なんて悩むことになって、「買わない」という選択肢が出てくるのだとか。


ここで登場するのがマジカルナンバーといって、人が瞬間的に記憶できる「短期記憶の限界数」。


そもそも「短期記憶」とは、人間が数十秒から数分で忘れてしまう記憶のことで、アメリカの認知心理学者ジョージ・ミラーが論文によって「日常的なことを対象にした場合の記憶容量は、7を中心としたプラスマイナス2個の範囲内である」という説を唱えています。


じゃあ先程の「4」でも問題ないじゃないか?なんて思った方、


実は、現在では、ネルソン・コーワンが発表した「マジックナンバー4プラスマイナス1」という説が有力となっていて、「人間が一度に記憶できる情報の数は4つ」なのだそうです。


考えてみれば「電話番号」「クレジットカード」なども数字は4つ程度で区切られていますし、数字を覚えるときも、大抵は「3区切り」「4区切り」で覚えたりしませんか?


とまぁ、本題からはかなり脱線してしまいましたが、マジックナンバー「4」であれば、先の「4つの選択肢」でも問題ないと思われるかもしれませんが、「記憶」ではなく、「選択させる」という場面においては、その数が多ければ多くなるほど比較検討することが増えてしまい、人は疲れ、考えることを止めるのだそうです。


つまり「買わない」という新たな選択肢が増えるんですね。


ですので、マーケティングにおいては、現在ありとあらゆる場面において3つの選択肢が用意されていることが多いのです。


まぁ、乱暴な言い方をすれば「1番購入して欲しい商品」に対して、グレードアップ、グレードダウンの商品を用意し、比較検討してもらうという方法を取ることが売上アップにつながるのでしょうね。




インセンティブのバランス

よく人を動かすために、インセンティブが使われますが、これも使い方次第では、思った以上の効果が出ないようですよ。



あるテストで、6つのゲームを行ってもらい、それぞれ普通の成績であれば「良」として定められた報酬がもらえ、さらにいい成績であれば「優」として定められた報酬が2倍となってもらえます。
しかし、成績が「良」以下であれば、報酬は貰えません。


ここで、その報酬額を3つにわけて、少額チームであれば1万円、中額チームであれば5万円、大額チームであれば10万円として、テストを行ったのだそうです。


ここで問題。


この「少額チーム」「中額チーム」「大額チーム」の中で、一番成績の良かったチームは、どのチームだったのか、わかりますか??


ちなみに、6つのゲームですべて「優」をとった場合の報酬は「少額チーム」が12万円、「中額チーム」が60万円、「大額チーム」が120万円となります。


「大額チーム」に決っているだろ???


いえいえ、残念。
実は「少額チーム」と「中額チーム」の成績にはあまり違いがなかったのだそうですが、一番貰えるであろう「大額チーム」の成績が一番悪かったのだそうです。


このような結果になったのは「大額チーム」のインセンティブがあまりに大きすぎたため、それがかえってプレッシャーとなり、満足な成績を収めることができなかったのだそうで、とくに1番目に行ったゲームでつまづいてしまった場合、そこから平常心を取り戻すことができなかったのだとか。


また、面白いことに「少額チーム」「中額チーム」は受け取る報酬にほぼ満足出来ていたのに対し、「大額チーム」の場合、「受け取れなかった報酬」に対する執着のほうが強かったのだそうです。


「少額チーム」が全て「優」であっても12万円ですから、「大額チーム」は6つのゲームの内、たった2つの「良」取るだけで「少額チーム」のマックス金額をゆうに超えることができます。


金額だけを見れば「大額チーム」でも十分なはずですが、本来120万円貰えるチャンスだったということを考えると、報酬20万円では満足はできるはずもなく、貰える可能性のあった報酬をミスミス逃したとなると、そりゃ未練がましくなってしまいますよね。


まぁ、そういうこともあり、期待している行動に対して、なにかしらのインセンティブをつけるのであれば、与える方も受け取るもホドホドが一番いいということです。






人間の性質である損失回避

「利得が満足感を増やす度合いよりも、損失が満足感を減らす度合いのほうが大きい。」


いきなりなんのこっちゃ?って感じですよね。


このような人間の性質を「損失回避」というのだそうで、どういうことかというと、


「1万円で買った馬券が見事に的中し、2倍の2万円のお金をゲットしました。
次にそのうちの1万円を使い馬券を新たに購入したのですが、こちらは見事にすってしまうことに・・・。」


この場合、結果的には1万円が手元に残りますし、「儲けた1万円-すった1万円」=ゼロとなりますから、利得と損失は同じはずです。


しかし、実際には「的中したときに止めておけばよかった・・・」なんて思ったりしませんか?
前田壮一は、かなり後悔し自己嫌悪にさえ陥ったりします・・・。


つまり、同じ1万円の損失と利得であるに関わらず、人は損失のほうを大きく捉えてしまうのです。


ちなみに一般的には、損失は利得の2倍以上のインパクトを持つと言われているのだそうで、人は得られる物よりも、失う恐怖の方が大きいのです。


もともと人間の性質として、利益を前にすれば確実に利益を取る選択をし、損失を前にすればその全てを回避しようとする選択を行うのだそうです。


まぁ、そりゃ最もですよね。
好きこのんで 損失を受けたくはありませんし、確実な利益に飛びつきたいのは当りませです。


今回のことは、行動経済学における最も代表的な理論の一つであるプロスペクト理論というものの一部を紹介したのですが、今後もこの辺のことを深く追いかけてみたいと思います。