行動経済学入門

経済学と心理学の中間に位置すると言われる行動経済学についてしっかりと学んでいきたいと思います。

今年のノーベル経済学賞

ちょっと時期が遅れましたが、今年のノーベル経済学賞が発表され、シカゴ大学のリチャード・セイラー教授が受賞しましたね。


実はこの方、身近な経済行動について心理学を交えて分析する「行動経済学」の権威で、代表作としては「準合理的経済学」と「セイラー教授の行動経済学入門」という本を執筆しています。


ちなみに「行動経済学」と銘打った受賞は、2002年のダニエル・カーネマン以来15年ぶりということになるのだそうですよ。


心理会計
このセイラー氏で有名な分野として「心理会計」というものがあるのですが、これは、人々は利得を喜ぶより損失を嫌がる程度が強いという「損失回避」をおカネの心理に応用したもので、私たちの心の中に一つ一つの行動から得られる損失や利益、費用等を計算し、それぞれの帳簿につける「心理会計(メンタル・アカウンティング)」の仕組みが存在しているのだそうです。


具体的な例としては、お昼ごはんの50円、100円の出費を出し惜しみするという一方で、数万円もするバックなどに対しての出費は惜しまないというような行動のことで、実際、これ、私にも当てはまります。


まぁ、昼食を食べてしまうと眠くなるから嫌だという理由もあるのですが、ここ数ヶ月、お昼ごはんを食べないようになりました。


もともと昼食を食べていた頃も、どこかへ食べに行くというよりも、近くのスーパーで500円程度で済ませようと心がけていましたし、こと毎日の食事に関しては出費を惜しんでいました。


しかし、つい先日、フラっと立ち寄ったお店に、とてもカッコいいバックが展示されており、それをついつい衝動買い・・・。


もともとバックが好きで、つい2ヶ月前にも買ったばかりなのに、5分で即決です。
しかもお値段も3万5千円という、かなりな贅沢品。


とはいえ、それほど気に入って買ったにも関わらず、まだ一度も使用していないんですけどね・・・。
もちろん、後悔なんてしていませんよ。
いつ下ろそうか、楽しみにしているくらいです。
(最近は雨がちで下ろす機会がなかなかありません。)


まぁ、私のような矛盾行為から、その他株価に対する行動などについても様々な見解の本を出されているので、一度読んでおくと、今後の人生の教訓になるかも知れませんよ。




参照点

私たちが損得を感じるときの基準となる点のことを参照点といい、人は、この参照点からどのくらいプラスに離れているか、マイナスに離れているかによって、損得を判断しています。


例えば、給与が1万円上がるとしたら、それは嬉しいことですよね。
しかしながら、今ここには参照点がありません。
ここで参照点として、これまで月給30万円だったとしましょう。


そうすると、1万円上がって、31万円になるわけですから、これを嬉しく思わない人はいないでしょう。
しかし、事前に給与が上がることが噂になっており「1人2万円上がるらしい」と聞いていたらどうでしょう?


この噂によって、あなたの参照点は32万円となります。
しかしながら、実際に上がったのは1万円だけで、31万円の月給となりました。
本来、給与はアップしているわけですから、嬉しいはずなのですが、参照点が32万円だったわけですから、嬉しいというよりも、がっかりしませんか?


1万円も給与が上がったのにがっかりしてしまうなんて、理不尽ですよね

価値関数

参照点からの利得と損失を関数として描いた満足度があり、これを価値関数といいます。
この価値関数をグラフで表すと、以下のようになります。


参照点からみて、利得・損失の絶対値が大きくなっていくと、その変化に対して価値の変化が小さくなっていくというもので、具体的には、差は10万円であったとしても、100万円と110万円の差よりも、0円と10万円の差のほうが主観的には大きく感じるということを意味しています。

行動経済学の創始者

行動経済学の創始者は、ダニエル・カーネマンとエイモス・トヴェルスキーと言われています。

1602夜『人工知能』ジェイムズ・バラット|松岡正剛の千夜千冊より

もともと心理学者であった2人が1970年代から多くの論文を共同で発表し、1979年、経済学で有名な雑誌「エコノメトリカ」で「プロスペクト理論」を発表し、それまで経済学で受け入れられていた「期待効用理論」が成立しないことを実験で示しました。
そして翌年、リチャード・セイラーが「心の会計」が発表し、この2つの論文をもって行動経済学の始まりとすることが多いのだそうです。


そして2002年には、ダニエル・カーネマンがノーベル経済学賞を受賞し、これをきっかけに行動経済学が勢いづいてきたのだそうです。


もう一人のエイモス・トヴェルスキーは、ノーベル経済学賞を受賞できなかったのか???なんて思われるかもしれませんが、残念ながらエイモス・トヴェルスキーは2002年以前に亡くなってしまっており、生きていれば確実に受賞していたであろうと言われています。


ちなみに私、前田壮一が行動経済学に興味を持ったのは、イスラエル系アメリカ人で心理学と行動経済学の教授のダン・アリエリーの「不合理だからうまくいく」を読んだことがキッカケで、彼がTedやyou tubeで動画をアップしているので、それが理解できるように英語も勉強したいと思うくらいです。

個人的に「経済学」はどうしても人間味がなく、学術的すぎて納得出来ないことが多かったのですが、行動経済学はあまりに人間的で、かつ頭がいい人間でなくても理解できることが多いので、すんなりと身に入ってきます。


色々なことに興味を持つわりに、なかなか持続しない自分が、ここまでのめり込むようになるなんて思ってもみませんでした。